メディア掲載

北九州港ニュースの第35号に掲載されました。

北九州港ニュース第35号に、代表理事の乙村のインタビューが掲載されました。
下記にそのインタビュー記事を掲載いたしますので、ご一読いただけましたら幸いです。

■北九州市の今後の発展に必要なものは

北九州市に住み始めてから約 20 年になります。
ほどよく都会でありながら、海や山も近く、自然が豊かで住みやすい地域だと思っています。
“モノづくりの工業都市”のイメージが強かったのですが、私が住んでいる若松区では、キャベツやトマトといったブランド野菜、スイカやとうもろこしといった美味しい野菜が作られています。

しかし、畑もたくさんある一方、北九州市の農業人口は目減りし、実際には 65 歳以上の方が全体の7割で、若い就労者が圧倒的に少ない状況です。
2016 年頃から「農福連携」 という、障害者や高齢者が農業に携われるように国や自治体などが支援する取り組みが始まっているのですが、まだあまり注目されていません。
北九州市も高齢化が進む中、次世代の農業の担い手として、障害者や高齢者の方々を繋いでいける仕組みづくりが必要です。

■おもやいファームについて

以前私は温泉施設で勤務しており、地域の人たちが野菜づくりを楽しむ家庭菜園のブースを施設内に設置したり、近隣の児童施設の子どもたちにお風呂掃除をしてもらい、その対価としてお風呂に入っていただくといった社会体験を実施するなど、地域に根付くような取り組みをいろいろと行っていました。
そんな中、介護施設のオーナーさんから、「発芽にんにくという変わったにんにくがあり、そのにんにくを通して雇用を見出すことが出来たら…。」というお話をうかがいました。
私自身、世の中の役に立つようなことで何か自分にできることがあれば、という思いがずっとありましたので、“ここで新たな事業に踏み出そう”、と12年間勤めた会社を辞め、2015 年に起業しました。

農業に対してのノウハウなし、コネなし、人脈なし、ゼロからのスタートでした。
当時、東北の方で発芽にんにくを栽培していたところがあり、そこで栽培指導を受けたのですが、発芽にんにくは土壌ではなく水耕栽培で、気温や水温といったものに非常に左右されるため、東北と同じやり方ではうまくいきませんでした。
そこから独自に研究を重ね、試行錯誤の末、水耕栽培で芽も根もまるごと食べられる栄養価の高い発芽にんにくの栽培に成功。
2016 年の秋に「乙村式にんにく」というブランドをたちあげました。

乙村式にんにくの栽培は、室内で天候に左右されず年間を通して安定した供給が可能、かつ、軽作業が多いので体の不自由な方やご高齢の方にとって作業しやすい、というメリットがあります。
“障害者の方が作ったものがお客様に喜ばれ、障害者の方に適切な賃金が支払われる”、そういった自主事業としてのモデルケースを作りたいと考え、2019 年に一般社団法人おもやいファームを設立。
就業支援事業ということではなく、障害者の方に農業としてそこで働いていただける仕組みをつくり、運営を行っています。

■今後の目標

起業から約 2 年半は、事業として成り立たない日々の方が多かったですね。
発芽にんにくが思うように育たず、どうやったら育つか?安定していかに栽培するか?という研究で、ほぼ睡眠時間がないような時期もありました。
それでもこの発芽にんにくが出来れば、食物として野菜として新たなニーズが生まれ、雇用に結びつくツールになると思い、研究を続けました。
 現在、乙村式にんにくは当ファームで月間約 30,000 粒を生産しています。市内外のスーパー18 店舗、飲食店 35 店舗で取り扱いをしていただいています。そして、“自ら作った商品を自ら販売する”という仕組みづくりでサポートさせていただいた提携ファームが全国に 8 カ所あります。

私がこの事業を始めて一番 良かったと思うのは、障害者の方々がやりがいを持って仕事をしているということです。
現在、障害者の方を 22 名雇用していますが、自分たちが作っているものが世の中で喜ばれ、自分たちが人の役に立っているという実感が“やりがい”に繋がっているのだと思います。
さらに、SDGsの「誰一人取り残さない」という目標の中で、企業が障害者を雇用する「ソーシャルファーム」の取り組みが広がり、障害者雇用が増えるきっかけになればと思っています。

今、障害福祉事業に取り組む中で、障害者の方に働いていただける環境を確保・継続していくことが一つの課題です。
実際、入居待ちをしている障害者の方と、障害者の方向けの住居の需要と供給のバランスは全くとれていません。
需要があるのに供給がなされていないのです。
空き家がどんどん増えている中で、そういうところをグループホームとして利用する環境が整えばよいのですが、問題は“耐震基準”です。
古い建物は耐震基準を満たしていない場合が多く、そうなると、建て替えの費用が問題になります。
そこをなんとかグループホームとして運営できるように整備し、障害者の方が住むところ、働くところ、それを循環できる仕組みをつくりたい、というのが今後の目標です。
自治体のご協力があると力強いのですが、そこばかりを頼るのではなく、自分たちでできるようなモデルケースをつくりたいと思っています。

■モットーにしていること

Give & Take(与えれば与えられる)、という言葉がありますが、「これだけやったのに見返りがない」というふうに、どうしても“与えられること”に重きを置いてしまう人が多いと感じます。
だから私のモットーは「Give Give Give and Share」。
Take を求めず常に Give し続ける。
Give し続けた中で、自然と巡り巡って自分のところにも嬉しいことや喜びが還ってくるのではないかと思うのです。
とにかく何も期待せずに与え続けるということが、人として一番役に立てることではないかと思っています。

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